娘は出て行ったので、一人暮らしになった。
結婚といっても式も披露宴も旅行もしないのを「ナシ婚」というらしい。
私の友人たちは 「お金も世話もかからなくていいわよ」 「当人たちが好きなようにすればいいのよ」 「当節は何でもアリよ」・・・とにぎやかに言ってくれる。
それでも親戚には知らせたほうがいいんじゃないかと、挨拶状を送るために ふたりは記念写真だけは撮りに行くことになった。
スタジオから「肌襦袢、裾除け、足袋は持参してください」と言われ、「お母さん『裾除け』って何?」と聞いてきたので、和服に縁がないので知らないのも無理はないと思った。私自身も和服に縁を切っていたし。
母の遺した大量の和服は「たんす屋」という着物リサイクル店に引き取ってもらったが、黒の礼服と和装小物類は引き取らないのでそのまま手元にあって幸いだった。
肌襦袢、裾除けなど水に通して「母親らしいことをしているな」とちょっとしみじみした。
ナシ婚で「すすんでいる?」のに、写真を撮る日、入籍する日は都合の良い日ではなく、縁起の良い日を選ぶというのだからちょっと笑う。
「もう一生結婚しない」と言っていたのに、ご縁があった娘。
向こうのご両親にもお目にかかったら、よい方たちでほんとによかったわ。
連れ合いも天国でほっとひと安心しているだろう。