
先日テレビを見ていたら、振り込め詐欺がまた一段と横行しているということだった。
問題は被害者が増えたということだけでなく、被害者の中に自殺者も出ているということだった。
こんなに用心するように、と何度も注意を呼びかけられているのになぜ被害にあってしまったのかと自責の念にとらわれ、さらに家族からは「不注意だ」と責められることもあるらしい。自殺してしまった女性の遺族は、どうしておばあちゃんを責めてしまったのだろうと悔やんでいるという。
実は私も、少し前までは「なぜ騙されるのだろう。こんなに話題になっているのだから注意が足りないのではないだろうか」と思ったりした。
でも、兄が騙されそうになり、知人は騙されてしまい、実情を訊くにつれて「これでは騙されても仕方がない
。かならずしも不注意なのではない」と思うようになった。
兄の場合。
一昨年のことになるが、ある日息子を名乗る人物から電話があった。
「電車の中にかばんを置き忘れた。すぐに駅に連絡したら『見つけたらとっておいてあげますよ』といわれた。実家の電話番号も教えておいたから駅員から連絡が来るかもしれない。また電話するからね」。
兄はすっかり息子だと思い「わかった」と返事した。
果たして間もなく駅の遺失物がかりを名乗る人物から「お宅の息子さんのかばんを預かっております」と電話があったので、あ、よかった発見されたのだ、早速息子に電話して安心させてやろうと思った。
「おまえ、よかったな。カバンが見つかったって駅から電話があったぞ」
「え?何のこと?」
というわけで、詐欺であることがわかった。
そのあとすぐに偽息子から電話があり「かばんには会社の小切手が入っていたが無くなっていた」とお金の無心があったそうだ。
兄に「あやしいと思わなかったの?」と訊いたら「声もそっくりだったし全然疑わなかった。危なかったよ」と言っていた。
詐欺はどんどん巧妙化して、新聞やテレビで手口が紹介されるたびにさらに学習してエスカレートしていくようだ。
最初にもどって。
私が「どうして騙されるのだろう。騙される人も不注意なのでは」と書いたが、これは大きな間違いであることが解って反省した。
被害者にも落ち度がある。騙される方も悪い・・・。
加害者が絶対的に悪いのに、これは被害者を責めてしまう態度だ。なんと不遜なのだろう。
「自分ならだまされない」という思いあがりだと思い知った。
いつのころからか「自己責任」が独り歩きし、、加害者よりも弱い被害者の方を責める風潮に私も加担していたのだと反省しました。
すごい反省で、自己嫌悪に陥っています。